雨どいの落ち葉、放置してない?2月に雨漏りが増えるワケ

年末の大掃除。やることリストを眺めていると、ふと気になることがありませんか。
「屋根の上の落ち葉、ずっと放置してるな…」

秋の落ち葉が積もった屋根のイメージ

正直に言いますね。私たちのもとには、毎年2月になると雨漏りの相談が急増するんです。そしてその原因を調べると、驚くほど多くのケースで「雨どいの詰まり」が関係しています。

「京都なんて雪、年に数回でしょ?」「水があふれるくらい、大したことないって」

そう思っていませんか。その油断が、実は一番怖いんです。

雨どいにたまった落ち葉は、まるで時限爆弾のようなもの。12月から1月にかけて静かに「準備」を整え、積雪と寒暖差という条件がそろう2月ごろ、突然天井からポタポタと水が落ちてくる。そんな形で被害が表面化することがあります。

しかも厄介なのは、修繕費用の問題。予防していれば数万円で済んだものが、放置すると数十万円、ひどい場合は数百万円に膨れ上がることも珍しくないんですよ。

この記事では、京都・滋賀エリア特有の気象データをもとに、「たかが落ち葉」がなぜ深刻な被害を引き起こすのか、その科学的なメカニズムをお伝えします。

なぜ「落ち葉の詰まり」が「2月の雨漏り」につながるのか

「雨どいが詰まったら、水があふれるだけでしょ?」

多くの方がそう考えています。でも実際は、冬の雨漏りってもっと複雑で、もっと厄介なメカニズムで起きているんです。

屋根の上に「氷のダム」ができる——「すが漏れ」という現象

「すが漏れ」という言葉、聞いたことありますか?「すが」は東北地方の方言で「氷」を意味します。正式には「氷堤現象(ひょうていげんしょう)」、英語では「アイスダム」と呼ばれるものです。

この現象の何が恐ろしいかというと、屋根に穴が開いていなくても雨漏りが発生するという点なんです。

雪が積もった冬の住宅の屋根
【図解】すが漏れ(アイスダム)発生メカニズム
融雪ゾーン 1 積雪 2 暖房熱で中央部が融雪 3 軒先へ流下 4 氷のダム形成 5 逆流→室内浸入 室内(20℃) 外気(−5℃)

どういうことか、順を追って説明させてください。

まず、屋根に雪が積もります。すると、室内の暖房熱が屋根裏を通じて屋根表面に伝わり、屋根の中央部から雪が溶け始めます。溶けた水は軒先に向かって流れていきますが、軒先は外気温の影響を受けやすいので低温のまま。ここで水が再び凍るわけです。

やがて、厚さ10cm以上の氷の層ができることもあります。この氷が「ダム」の役割を果たして、後から流れてくる雪解け水をせき止めてしまう。行き場を失った水は屋根上にたまり、水位がどんどん上がっていきます。

ここで起きるのが毛細管現象です。細い隙間を液体が重力に逆らって上昇していく物理現象ですね。これによって屋根材の接合部から水が逆流し、野地板を伝って室内へ——。これが冬特有の雨漏りの正体なんです。

普通の雨とはわけが違う!雪解け水が「家の内側」を壊すルート

雨どいが詰まると、排水許容量を超えた雨水は軒樋(のきどい)の外側——つまり建物の外壁側や軒天(のきてん:軒先の裏側の天井部分)に向かってあふれ出します。これをオーバーフローと呼びます。

「外壁が汚れるくらいで済むんじゃない?」

そう思われるかもしれません。でもね、オーバーフローした水が直撃するのは、本来雨水が触れることを想定していない部位なんですよ。

特に危険なのが鼻隠し(はなかくし)と呼ばれる部材。軒先の先端に取り付けられた板で、雨樋を固定する下地になっている部分です。雨樋からあふれた水がここに直接当たり続けると、塗膜の劣化部分から水分が浸入して腐食が進行します。

京都・滋賀だからこそ危ない!「湿った重い雪」と「盆地気候」の罠

「うちは豪雪地帯じゃないから平気でしょ」

京都や滋賀にお住まいの方から、よくこんな声を聞きます。でも実は、この地域特有の気候こそが、雨どいにとって最も過酷な環境を作り出しているんです。

冬の京都の風景

北海道の雪とは別物!関西特有の「ボタン雪」の重さ

雪には「乾雪(かんせつ)」と「湿雪(しっせつ)」があります。北海道で降るサラサラのパウダースノーは乾雪で、比重は0.05〜0.08程度。一方、京都・滋賀で降る雪は水分を多く含んだ「ボタン雪」と呼ばれる湿雪で、比重は0.10〜0.15。

  • 0.05〜0.08
    北海道の乾雪(比重)
  • 0.10〜0.15
    京都・滋賀の湿雪(比重)
  • 30〜50倍
    詰まり時の負荷増加

つまり、京都の湿雪10cmは、北海道の乾雪20〜30cm相当の重量に匹敵するケースもあるということ。

建築の専門資料によると、一般的な雨どい(CR105型)に積雪30cmが乗った場合、金具1箇所あたり約12.6kgの荷重がかかります。標準的な吊金具の耐荷重は約10〜15kg/箇所ですから、これだけで耐荷重限界に近い状態なんですよね。

「昼に溶けて夜に凍る」——盆地気候が雨どいを壊すメカニズム

京都盆地の冬は、昼と夜の気温差が非常に大きいことで知られています。気象庁の平年値によると、京都市の12月〜2月の日較差(最高気温と最低気温の差)は7.7〜8.4℃

凍結した水滴のクローズアップ

水は凍ると体積が約9%膨張するのをご存じでしょうか。落ち葉などで詰まった雨どい内に雪解け水がたまり、夜間に凍結すると、この膨張圧が雨どい内壁にひび割れを発生させます。

翌日、日中の気温上昇で融解し、夜にまた凍結——。この凍結融解サイクルが繰り返されることで、ひび割れは徐々に拡大していきます。

放置の代償は「予防費用の数十倍」?経済的損失と二次被害

「まあ、多少水があふれても…」そう思って放置を続けた場合、どんな被害が発生するのでしょうか。残念ながら、その答えは「雨漏り」だけでは済まないんです。

外壁の爆裂・シロアリ…見えない場所で進む「構造破壊」

凍害(とうがい)という言葉をご存じですか。建材内部に浸透した水分が凍結・膨張を繰り返すことで、素材を内側から破壊する現象です。

  • 雨どいの詰まり 落ち葉や土砂が雨どいに堆積
  • オーバーフロー 排水できない水が外壁側へ溢れ出す
  • 木材の湿潤化 床下や基礎周辺が常に湿った状態に
  • 腐朽菌の繁殖 湿った木材に腐朽菌が発生
  • シロアリの誘引 腐朽菌がシロアリを呼び寄せる物質を生成

【コスト比較】「今の掃除代」vs「将来の修繕費」

では、具体的にどれくらいの費用差が生まれるのでしょうか。

予防にかかる費用(今やれば)

項目 費用相場
雨どい清掃(業者依頼・足場なし) 1万〜3万円/回
落ち葉除けネット設置 数万円程度
雨どい部分補修 2万〜8.5万円
合計目安 2万〜10万円程度

放置した場合の修繕費用

項目 費用相場
雨漏り調査・修理 3万〜50万円
屋根修理(重度・葺き替え) 80万〜200万円
軒天修理+足場代 10万〜65万円
外壁修繕(部分補修〜全面塗装) 5万〜200万円
凍害修繕(重度) 100万〜数百万円
シロアリ駆除+補修 10万〜300万円
合計 30万〜数百万円超
電卓と書類のイメージ

さらに注意すべきは、火災保険の適用範囲です。台風や暴風による破損であれば「風災」として補償対象になりますが、経年劣化による雨漏りや、雨どい詰まりを放置した結果の浸水は、多くの場合免責(補償対象外)となります。

今すぐできる!地上から行う「安全セルフチェック」

ここまで読んで「うちは大丈夫かな…」と不安になった方もいらっしゃるでしょう。まずは、安全に地上からできる点検方法をご紹介しますね。

梯子は不要!双眼鏡とスマホでできる「5つの点検ポイント」

  • ①雨の日の水の流れを観察する 降雨中に軒先を観察。水が一箇所から滝のように落ちている場合、その上流で詰まりが発生している兆候です。
  • ②雨どいの変形をチェックする 晴れた日に、双眼鏡やスマートフォンのズーム機能を使って雨どいを確認。膨らみ、たわみ、下がり、歪みがないかを点検します。
  • ③植物が生えていないか確認する 軒樋の内部に雑草が見える場合、土や泥が堆積して詰まっている明確な証拠です。
  • ④外壁の汚れ・水跡を探す 縦方向の黒い筋やコケの発生は、雨水が正常に流れていないサインです。
  • ⑤軒天のシミ・変色を確認する 軒下の天井部分に茶色いシミ、カビ、塗装の剥がれがないかを確認。過去にオーバーフローが発生した可能性を示しています。
住宅の外観を点検するイメージ

【死亡事故多発】大掃除で絶対にやってはいけない3つのこと

「点検で異常が見つかったら自分で掃除しよう」——その考えは、ぜひ思いとどまってください。

  • NG①:屋根・梯子への昇降 厚生労働省の労働災害統計によると、墜落・転落による死亡者数は年間200人以上。冬場の屋根は凍結で滑りやすく、プロでも細心の注意を払う危険な場所です。
  • NG②:高圧洗浄機の使用 強力な水流は落ち葉や土砂を粉砕するのではなく、縦樋の奥深くに押し込み、さらに除去困難な「重度の詰まり」に変化させてしまいます。
  • NG③:雨どいの上に乗る・体重をかける 雪や凍結融解で脆くなった塩ビ製雨どいは、想像以上に簡単に割れます。体重をかけた瞬間に破損し、転落事故につながる危険性があります。
【グラフ】月別・雨漏り相談件数の推移(京都・滋賀エリア)
0件 5件 10件 15件 20件 8 22 15 7 5 12 9 6 18 10 6 5 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 通常期 ピーク期 すが漏れ 台風後

まとめ:年末の今こそ、冬の雨漏りを防ぐチャンス

  • 1 雨どいの詰まりは、ただ水があふれるだけの問題ではありません。積雪と寒暖差の条件がそろう2月前後に発生しやすい「すが漏れ」や「外壁凍害」の直接的な原因となり、見えない場所で静かに構造破壊を進行させる恐れがあります。
  • 2 京都・滋賀の「重い湿雪」「盆地特有の寒暖差」は、雨どいにとって全国でも屈指の過酷な環境です。「豪雪地帯じゃないから大丈夫」という認識は、凍結融解サイクルの観点からは残念ながら正反対なのです。
  • 3 放置による修理費用は予防費用の10倍〜100倍になることも。しかも火災保険の対象外になりやすいという、経済的にも非常に厳しい結果を招く可能性があります。

でも、悲観する必要はありません。「年末のうちに気づけたこと」が最大の幸運なんです。本格的な雪シーズンが到来する前の今なら、まだ間に合います。

まずは地上からの安全な点検で、ご自宅の状況を確認してみてください。そして少しでも異常を感じたら、無理に屋根に登ることなく、専門業者への相談をおすすめします。

「うちの雨どい、もしかして詰まってる?」と不安になった方へ

京都市山科区を中心に、お客様の大切な住まいを守るお手伝いをいたします。
地上からのカメラ調査&冬の屋根リスク診断を無料で実施中です。


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