艶消し外壁は弱い?15年持つ専用設計塗料の選び方

「艶消し塗装は寿命が短い」はもう古い?
2026年版・お洒落で長持ちするマット外壁の選び方

「うちの外壁、そろそろ塗り替え時かな」

そんなふうに思い始めたとき、ふと目に留まるのが、ご近所のしっとりとした落ち着いた外壁だったりしませんか?

ピカピカに光る「塗りました!」感のある外壁よりも、街並みにすっと溶け込むようなマットな質感。京都のような歴史ある街並みでは特に、あえて光沢を抑えた「大人の外壁」に憧れる方が本当に増えてきました。

ただ、ここで多くの方がぶつかる壁があるんです。

「艶消しって、汚れやすくて持たないんでしょ?」

ネットで調べれば調べるほど、「艶消し塗料は耐候性が低い」「添加物のせいで強度が落ちる」といった情報ばかり。私も正直、数年前まではそう思っていました。

でも、ここだけの話。塗料の世界は、この20年で驚くほど進化しています。

落ち着いたマット仕上げの住宅外観

2000年代から地道に積み重ねられてきた技術革新のおかげで、今では「艶消し専用設計」という、従来品とはまったく違う発想の塗料が複数のメーカーから登場しているんです。これを選べば、艶あり塗料と同等か、それ以上の耐久性を確保しながら、上品なマット仕上げが実現できる時代になりました。

この記事では、単なるデザインの話にとどまらず、最新の「塗料工学」の視点からデザイン性と耐久性を両立させる「正しい艶消し塗料の選び方」をお伝えしていきます。

京都市の厳格な景観条例のこと、滋賀県の琵琶湖周辺ならではの気候特性のこと。そういった地域事情も踏まえながら、「こんなはずじゃなかった…」と数年後に後悔しないための情報をまとめました。

なぜ今、「艶消し(マット)」が選ばれているのか

「ピカピカ=豊かさの象徴」という時代は終わった

思い返してみてください。1990年代から2000年代にかけて、外壁塗装といえば「新築みたいにツヤツヤ」が良しとされていましたよね。光沢のある外壁が、どこか富の象徴のように捉えられていた時代です。

ところが今、消費者の価値観は大きく変わってきています。

周囲と調和しながら、時間が経つほどに深みを増していくマットな質感。これが高級住宅の代名詞になりつつあるんです。

背景にあるのは、「見せびらかす消費」から「心の充足」へのシフトでしょう。街並みに個性を添えつつも、光沢が控えめだから周囲の景観とも馴染みやすい。そんな「控えめな美」を求める方が増えているのは、ある意味自然な流れなのかもしれませんね。

歴史的な街並みに調和する住宅

京都市が示す「質の高い塗装」の基準とは

この流れを決定づけているのが、地方自治体による景観条例の存在です。

特に京都市は2007年に「新景観政策」を施行し、日本国内で最も厳格な景観規制を敷いています。これ、ご存じでしたか?

京都市の「京の景観ガイドライン」では、主要な外壁に使用する材料について、ガラスと自然素材を除き、原則として「光沢のないもの」とすることが義務付けられています。

美観地区や美観形成地区においては、屋根材も「光沢のない濃い灰色または黒」と指定されているんです。つまり、マットな質感は「おしゃれだから」というだけでなく、ルールとして求められているというわけですね。

京都市の外壁色彩規制(マンセル表色系による彩度上限)
色相 彩度の上限
R(赤系)・YR(黄赤系) 6以下
Y(黄系) 4以下
GY・G・BG・B・PB・P・RP 2以下

この規制は、京都らしい「控えめな美」や「周囲との調和」を大切にする価値観に基づいています。

そして見逃せないのが、この京都市の基準が全国的な「質の高い塗装」のベンチマークになりつつあるということ。滋賀県でも琵琶湖周辺の景観計画区域で色彩基準が設けられ、湖岸景観との調和から低彩度の落ち着いた色彩が推奨されています。

つまり艶消し塗装は、単なる流行ではありません。地域の資産価値を守るための、合理的な選択肢として位置づけられているのです。

【ここが落とし穴】従来の「艶消し」が弱かった科学的理由

「艶消しは耐久性が低い」

これ、実は迷信でも偏見でもなく、科学的な根拠に基づいた事実だったんです。

まずは、なぜ従来の艶消し塗料が弱かったのか、そのメカニズムを正しく理解しておきましょう。ここを押さえておくと、後で紹介する「専用設計品」のすごさがより実感できるはずです。

光沢を消す仕組み:塗膜表面の「凹凸」がすべてを決める

塗料の艶は、塗膜表面で光がどう反射するかで決まります。

艶あり塗料は表面がツルツルなので、入射光の多くが鏡面反射(同じ角度で跳ね返る)します。鏡のようなイメージですね。

一方、艶消し塗料は表面にミクロレベルの凹凸があるため、光が乱反射してマットな質感になるんです。

この凹凸を作るのが艶調整剤(つや消し剤)と呼ばれるもの。湿式法シリカ(沈降性シリカ)が最も一般的で、他にも炭酸カルシウム、タルク、アクリル微粒子などが使われます。

図解:艶あり塗料 vs 艶消し塗料の光の反射メカニズム

「混ぜ物」のリスク:樹脂密度の低下という致命的弱点

ここに、従来の艶消し塗料が抱えていた構造的な問題があります。

塗料は「樹脂+顔料+添加剤+溶媒」で構成されていて、このうち樹脂(バインダー)が塗膜の耐久性・耐候性を決める最重要成分なんです。

従来の艶調整品では、艶あり塗料に艶調整剤を後から添加して艶を落とします。問題は、一斗缶の容量は変わらないということ。添加剤を入れた分だけ、樹脂の配合量が減ってしまうんですね。

  • 18%
    3分艶消しの添加量
  • 33%
    5分艶消しの添加量
  • 100%
    全艶消しの添加量

これ、料理に例えるとわかりやすいかもしれません。お鍋の大きさは同じなのに、水を足せば足すほど、肝心のダシが薄まってしまう。そんなイメージです。

メーカーの注意喚起

「必要量以上にフラットベースを配合しないでください。塗膜の耐久性が大きく劣化する可能性があります」と明記しているメーカーも。業界では「艶を落とすたびに耐候性が落ちる」と言われ、艶あり塗料と比較して1.5〜3年程度耐用年数が短くなる傾向があるとされてきました。

汚れの付着しやすさ:凹凸が「カビの温床」になってしまう

もう一つ見逃せない問題が、汚れの付着しやすさです。

艶調整剤による表面の凹凸は、埃やカビ、藻、コケの胞子が入り込む「足場」になってしまいます。

艶あり塗膜なら、雨水が汚れを洗い流す「セルフクリーニング効果」が期待できます。でも凹凸のある艶消し塗膜では水はけが悪く、この効果が大幅に低下してしまうんですね。

特に京都・滋賀のような高湿度地域では、この構造的弱点が顕著に現れます。

日本の伝統的な建築と自然環境

選択肢が広がった!「艶調整品」と「艶消し専用設計」の決定的な違い

さて、ここからが本題です。

多くの塗装サイトがあまり触れていない、艶調整品と艶消し専用設計品の技術的な違いについて詳しくお話しします。

正直、この違いを知っているかどうかで、10年後・20年後の外壁の状態は大きく変わってきます。後悔しない外壁塗装への第一歩として、ぜひ押さえておいてください。

従来の「艶調整品」が抱える3つのリスク

前述の通り、艶調整品は既存の艶あり塗料にフラットベースを混ぜて艶を落とす方式です。構造的な問題に加えて、現場での施工においても以下のようなリスクがあるんです。

  • 1
    攪拌不足による艶ムラ
    艶消し剤は沈殿しやすい性質があります。十分な攪拌がないと、仕上がりにムラが出てしまうことも。
  • 2
    配合ミスによる品質のばらつき
    「艶有と100%消しを1:1で混ぜると50%消しになるかと思いきや、実際は40%消し程度になることもある」なんて報告も。
  • 3
    擦り艶の発生
    職人さんの技術力によって仕上がりに差が出やすいという問題もあります。

さらに厄介なのが、塗料メーカー単独での保証制度は基本的に存在しないということ。現場での独自配合はメーカーの想定外使用となり、保証対象外になるリスクがあるんです。

技術革新の歩み:2000年代から進化を続ける「専用設計品」

一方、艶消し専用設計品は発想がまったく違います。

最初から艶消し仕上げを前提に、樹脂配合が最適化されているんです。艶調整剤を添加しない、または添加しても樹脂密度を維持する設計により、耐久性と低汚染性の両立を実現しています。

この技術革新は2000年代から始まり、近年さらに選択肢が充実してきました。特に2022年には日本ペイントから完全艶消しの専用製品が発売され、主要メーカーの製品ラインナップが出揃った形になっています。

代表的な3つの技術をご紹介しましょう。

1
ナノコンポジット技術 水谷ペイント「ナノコンポジットW」

2004年発売。2007年には塗料業界初の「井上春成賞」(日本三大技術賞のひとつ)を受賞した先駆的な製品です。

20〜30nmの超微粒子シリカをアクリルシリコン樹脂で覆った、粒径50〜60nmのナノコンポジットエマルション樹脂を採用。

驚くべきは、艶調整剤を一切添加せずに1〜2分艶(マット)を実現していること。無機質的特性により汚れの浸入をブロックしつつ、親水性塗膜で雨による汚れ洗浄効果も発揮します。

期待耐用年数:13〜16年
2
緻密塗膜構造+ラジカル制御技術 日本ペイント「パーフェクトトゥルーマット」

2022年10月発売の「真のつや消し水性塗料」です。

艶あり塗料にフラットベースを添加する方式ではなく、最初から艶消し専用として開発されています。

緻密な塗膜構造により「奥つや」「底つや」と呼ばれるわずかな艶も残らない、完全マットを実現。高耐候酸化チタン+光安定剤によるラジカル制御技術で、従来シリコングレードを超える耐候性を確保しています。

3
中空ガラスビーズ技術 アステックペイント「超低汚染リファイン艶消1000MS-IR」

従来のシリカ系艶消し剤の弱点を克服した、革新的なアプローチの製品です。

中空ガラスビーズは粒子が真球状で、滑らかな凹凸を形成するため汚れが入り込みにくい構造になります。

表面と内部の両方で光を乱反射させるため、少量の添加で艶を抑制でき、樹脂密度の低下を最小限に抑えられるんですね。

期待耐用年数:17〜20年 ※実際の耐用年数は立地環境や施工条件により変動します

比較表:艶調整品 vs 艶消し専用設計品

ここで両者の違いを整理しておきましょう。

項目 艶調整品 艶消し専用設計品
製法 艶あり塗料+艶調整剤 専用配合で設計
樹脂密度 添加剤分だけ低下 最適化維持
耐用年数 1.5〜3年短縮傾向 艶あり同等以上
汚れ付着 凹凸に溜まりやすい 低汚染設計
品質安定性 配合・攪拌に依存 工場品質管理

この違いを知っているかどうかで、将来の外壁の状態は本当に変わってきます。

「艶消し塗料」と一括りにせず、その製品が「艶調整品」なのか「専用設計品」なのかを必ず確認する。 これが後悔しない塗装選びの鉄則です。

モダンな住宅の外観

京都・滋賀などの「高湿度エリア」で特に注意すべき苔・カビ問題

艶消し塗料を選ぶとき、最大の懸念事項といえばやはり苔(コケ)や藻、カビの発生でしょう。

特に京都盆地や琵琶湖周辺の滋賀県は、微生物の繁殖に極めて適した気候条件を備えています。この点についてもう少し詳しく見ていきましょう。

京都・滋賀特有の気候リスク

  • 約65%
    京都の年間平均湿度
  • 223.6mm
    7月の平均降水量
  • 約30℃
    年間気温差

京都の年間平均相対湿度は約65%、7月には69%に達します。

三方を山に囲まれた盆地地形で風通しが悪く、梅雨期の高湿度・高降水量がコケ・カビ発生リスクを高めています。

また京都の年間気温差は約30℃(最高33.7℃〜最低1.5℃)もあります。塗膜の膨張収縮によるクラック発生、冬季の結露・凍結融解サイクルによる水分浸入リスクも見逃せません。

滋賀県も琵琶湖効果により湿度が比較的高く、彦根の年間降水量は約1,600mm。防カビ・防藻対策がより重要になるエリアといえるでしょう。

プロが実践する3つの対策

では、こうした厳しい環境でも艶消し塗装を成功させるには、どうすればいいのでしょうか。実際に現場で効果を発揮している3つの対策をご紹介します。

対策 1 親水性塗膜による「セルフクリーニング」

最新のナノコンポジット塗料や超低汚染塗料は、塗膜表面を「超親水性」にすることで、雨水が汚れの下に入り込んでセルフクリーニングを行う機構を備えています。これにより、艶消しでありながら、苔や藻の栄養源となる汚れを長期間排除することが可能になりました。

対策 2 面ごとの艶の使い分け

実は、プロの間ではよく使われるテクニックがあります。北面は最もコケ・カビが発生しやすいため、艶を上げる(3分艶以上)か、防カビ・防藻塗料を使用することを推奨しています。「北面だけ3分艶、他は艶消し」という部分的な使い分け。一見シンプルですが、これが長期美観を保つための非常に有効な方法なんです。

対策 3 非破壊的メンテナンス

施工後のメンテナンスも重要です。最近では「コケシラズ」のような専用薬剤を使い、水洗いやブラッシングなしで除去しながら、長期間の再発抑制効果を発揮する方法が主流になっています。塗装前の下地処理においても、高圧洗浄だけでなくバイオ洗浄剤を使用することで、新塗膜の寿命を大幅に延ばす手法が標準化しつつあります。

美しく維持された住宅外壁

トータルコストで考える「賢い選択」

「専用設計品って、やっぱり高いんでしょ?」

こう思われるのは当然です。確かに艶消しは艶ありの約1.1〜1.2倍の価格になる傾向があります。

でも、ここで大切なのは初期費用ではありません

30年スパンでのライフサイクルコスト(LCC)で考えてみてください。

塗料グレード別・30年間のトータルコスト比較(参考試算)

項目 汎用シリコン(艶消) ラジカル制御(艶消) 次世代マット(専用設計)
初回施工費 約80万円 約95万円 約120万円
期待耐用年数※ 8〜10年 12〜15年 15〜20年
30年間の塗装回数 3回 2回 1.5〜2回
30年間の総費用 約240万円 約190万円 約180〜200万円

※期待耐用年数はメーカー公表値および促進耐候性試験に基づく目安です。実際の耐用年数は立地環境(日射量、湿度、塩害等)や施工品質により変動します。
※30坪の住宅を想定。足場設置(15〜25万円)、高圧洗浄(4〜10万円)等を含む概算

このシミュレーションが示すように、初期投資は高くても、専用設計品を選ぶことで長期的な塗り替え回数を減らせる可能性が高いのです。

特に京都の景観条例地域では艶消しが必須となるため、耐久性の高い専用設計品への投資は合理的な判断といえるでしょう。

ただし、これらの数値はあくまで参考値です。実際の見積もりでは、お住まいの立地条件や外壁の状態を踏まえて、信頼できる業者にシミュレーションを依頼されることをお勧めします。

グラフ:塗料グレード別 30年間ライフサイクルコスト比較
0万円 50 100 150 200 250 80万円 80万円 80万円 240万円 (3回塗装) 95万円 95万円 190万円 (2回塗装) 70万円 120万円 190万円 (1.5〜2回) 汎用シリコン (艶消) ラジカル制御 (艶消) 次世代マット (専用設計) 初回施工費 メンテナンス費

まとめ:京都・滋賀で艶消し塗装を成功させる5つの鍵

ここまでの内容を整理すると、艶消し外壁塗装で後悔しないためのポイントは以下の5点に集約されます。

  • 艶調整品ではなく艶消し専用設計品を選ぶこと。水谷ペイント「ナノコンポジットW」、日本ペイント「パーフェクトトゥルーマット」、アステックペイント「超低汚染リファイン艶消1000MS-IR」などは、樹脂密度を維持しながら艶消しを実現する技術的優位性を持っています。
  • 京都・滋賀の高湿度環境には防カビ・防藻機能を重視すること。「ナノコンポジットW防藻+」や低汚染塗料との組み合わせが有効です。
  • 北面は艶を上げるか防カビ塗料を使用する面ごとの使い分け。全面一律の艶消しではなく、方角・部位に応じた最適化が長期美観の鍵となります。
  • 現場での艶調整は避け、工場調整品を使用すること。品質安定性と保証の観点から、これは外せない条件です。
  • 京都市在住の方は事前に景観政策課へ相談すること。「光沢のない」という定性的基準の解釈は個別判断となるため、塗料選定前の確認が重要です。(京都市都市計画局景観政策課 TEL 075-222-3397)
美しい外観の住宅

おわりに

外壁は、家の「顔」であると同時に、家族を雨風から守る「皮膚」でもあります。

ただ流行に乗るのではなく、科学的な根拠を持って「強い皮膚」を選んであげてください。

年月が経つほどに味わいが増す、そんな素敵なマット外壁。ぜひ実現してみてはいかがでしょうか。

「我が家の環境で、艶消しにしても大丈夫?」と迷ったら

同じ「艶消し」でも、立地条件や外壁の素材によって最適な塗料は異なります。「艶調整品」と「専用設計品」の違いを正しく理解し、あなたの家にベストな提案ができる専門家に相談してみませんか?

Re:staでは、京都市山科区を中心に、お客様の地域の気候や景観条例を踏まえた外壁診断を承っております。


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