ケルヒャーで外壁掃除、待った!雨漏り直行の危険ゾーン3つ

ケルヒャーで外壁掃除、ちょっと待った!
プロが絶対に手を出さない
「即・雨漏り」危険ゾーン3選

年の瀬が近づくと、なんだか家中をピカピカにしたくなりますよね。黒ずんだ外壁、北側にこびりついたコケ。「高圧洗浄機で一気に吹き飛ばして、真っ白な家で新年を迎えたい!」——そんな気持ち、すごくよく分かるんです。

ホームセンターでケルヒャーを手に取って、「これで業者に頼まなくて済む!」とワクワクしている方も多いのではないでしょうか。

でも、あの「プシューッ!」という爽快感の裏側で、実はとんでもないことが起きているかもしれません。

私たちが現場で何度も目にしてきた、見えないところで進行する「家の破壊」。今回は、この話を正直にお伝えしようと思います。

高圧洗浄機での外壁清掃

「家庭用だから弱いし大丈夫」が一番危ない

「業務用じゃないんだから、そんな大げさな…」

こう思った方、実はその考えが一番危険なんです。

水圧じゃない。「水量」の違いが命取り

家庭用と業務用の高圧洗浄機。決定的な違いは水圧の強さじゃありません。水量なんです。

項目 家庭用(ケルヒャー等) 業務用(プロ仕様)
常用吐出圧力 2〜8MPa 14.7〜15MPa以上
水量 270〜430L/h 600L/h以上
洗浄の仕組み 少ない水を「点」で叩く 大量の水で「面」で流す

プロ用の洗浄機は、たっぷりの水量で圧力を広く分散させながら汚れを洗い流していきます。一方、家庭用は水量が少ないので、汚れを落とそうとすると、どうしても一点に力が集中してしまう

この「点」の衝撃が、劣化した外壁材には刃物のように突き刺さるんですね。

しかも厄介なのが、水量が少ない分、なかなか汚れが落ちないこと。「もうちょっと近づけたら落ちるかな…」とノズルを壁にグッと近づけてしまう。これ、典型的な失敗パターンなんです。

「弱いから安心」という油断が、取り返しのつかない事態を招く。私たちが修繕現場で見てきた光景は、まさにこのパターンばかりでした。

プロの外壁診断

プロは洗う「前」に何をしているか

「でもさ、プロだって高圧洗浄してるでしょ?」

おっしゃる通りです。ただ、プロの高圧洗浄には「塗装」がセットになっています。洗って終わりのDIYとは、そもそも目的が違うんですね。

プロが行う「健康診断」項目
  • チョーキングの程度
    壁を触って白い粉がつくかどうか
  • クラックの有無
    幅0.3mm以上のひび割れは要注意
  • シーリングの状態
    ひび・硬化・痩せがないか
  • 塗膜の浮き・剥がれ
    目で見て、叩いて確認

この診断結果をもとに、水圧やノズル、洗剤を選んでいくわけです。

チョーキングが出ている壁に高圧水を当てるのは、言ってみれば傷口に塩を塗り込むようなもの。診断なしのDIYは、すでに弱っている場所に容赦なく水をぶつけることになります。結果は…想像がつきますよね。

ここだけは絶対ダメ!プロが避ける3つの危険ゾーン

さて、具体的にどこが危ないのか。

表面の塗装が剥がれる程度なら、まだ可愛いものです。本当に怖いのは、家の骨組みにまでダメージが及ぶケース。プロが絶対に高圧水を当てない場所を、3つご紹介します。

シーリング(コーキング)目地

防水の「最後の砦」

「目地の汚れが一番気になるんだよね…」

その気持ち、痛いほど分かります。でも、シーリングは外壁の動きを吸収しながら水の侵入を防ぐ、いわば「柔らかい防護壁」。ここへの高圧洗浄は、最もやってはいけない行為なんです。

劣化したシーリングに高圧水が当たると、瞬間的に強い力がかかります。この力がシーリング材を壁から引き剥がしたり、中で引き裂いたりしてしまう。

そうなると、目地の裏側にある通気層へ水がダイレクトに入り込みます。サイディングの裏から腐食が始まり、構造躯体まで水が到達することも。

業界では「コーキングが切れている所に高圧洗浄すると、必ず漏水する」と言われているほどです。

本格的な打ち替え工事:足場代込みで30〜50万円

内部の防水紙や木材の乾燥・交換まで必要になれば、さらに跳ね上がることも珍しくありません。

窯業系サイディングの「欠け」と「クラック」

時限爆弾のスイッチ

「小さいヒビくらい、別にいいでしょ?」

残念ながら、この認識は危険です。

窯業系サイディングは、セメントや繊維質でできていて、表面の塗膜で守られている限りは優秀な外壁材。でも、塗膜が剥がれたりクラックが入ったりすると、セメント特有の「吸水性」が牙をむくんです。

高圧水がクラックから噴き込むと、水がサイディング内部の細かい隙間に強制的に押し込まれます。この「強制吸水」が、後でお話しする「凍害」の引き金になるわけですね。

大手メーカーの公式見解

実は、国内の大手サイディングメーカーは、公式に高圧洗浄を避けるよう明記しています

ニチハ
「高圧洗浄や、スチーム洗浄などは、塗膜に悪影響を及ぼすおそれがありますので避けてください
KMEW
「高圧水洗による洗浄は、塗膜表面を傷めるおそれがありますので避けてください
日鉄鋼板
「高圧洗浄機は、漏水の原因となる恐れがありますのでお避けください

メーカー自身がここまではっきり言っている以上、DIYでの使用は自己責任の範囲を超えているのではないでしょうか。

住宅の軒天と換気口
軒天・換気口・窓枠まわり

水は「下から上」に逆流する

「クモの巣取りたいから、上に向けて撃ってるんだけど…」

これ、プロの間では「禁じ手」と呼ばれている行為なんです。

住宅の外壁は、「雨は上から下に流れる」という前提で設計されています。軒天には屋根裏の換気のために、換気口や穴の開いた板が付いていますが、ここに下から高圧水を当てると、設計上あり得ない方向から水が入り込んでしまう。

さらに厄介なのが「サクション効果」。高速の水流が通気層の隙間を通るとき、周囲の空気を吸い込む力が発生して、外の水を内部にグイグイ引っ張り込んでしまうんです。

入り込んだ水は断熱材を濡らし、野地板や垂木といった屋根の構造材を腐らせます。最終的には室内への雨漏りとして現れて、修繕費用は50万円〜。電気配線への被害リスクも無視できません。

サッシメーカー各社も、サッシ枠や網戸への高圧洗浄による水漏れリスクを警告しています。プロが「軒天には絶対に高圧洗浄しない」と言い切るのは、こうした構造的な弱点を知り尽くしているからなんですね。

12月の洗浄は特に危険——「凍害」という恐怖

年末の大掃除シーズン。「今のうちに外壁もきれいにしておこう」と考える方は多いでしょう。

でも、京都・滋賀にお住まいの方は、ここからが本当に大事な話です。

壁が内側から破裂する「凍害」のメカニズム

冬に外壁を洗うと、何が起きるのか。

答えは「凍害」——壁が内側からバリバリと破裂する現象です。

凍害発生のメカニズム
吸水
クラックや欠けから高圧水が外壁材の中に浸み込む
凍結
夜の冷え込みで、浸み込んだ水が凍る
膨張
水は凍ると体積が約9〜10%増える
破壊
膨張した氷がサイディング内部から骨材を押し出す
進行
凍結と融解を繰り返し、症状がどんどん悪化

最終的には「爆裂」と呼ばれる、外壁材が内側から破裂したように崩れる状態に。これは塗装の剥がれとは次元が違います。

外壁材そのものの交換が必要 → 修繕費用は100万円〜

塗装の剥がれとは桁違いの金額になります。

冬の京都の街並み

京都・滋賀の気候が凍害リスクを高める理由

京都は三方を山に囲まれた盆地。あの独特の「底冷え」で知られていますよね。12月後半は最低気温が0℃近くまで下がり、大阪より2度前後低いのが当たり前です。

滋賀県はさらに厳しくて、長浜市旧余呉町は日本最南端の特別豪雪地帯に指定されています。湖北では2〜3mの積雪も珍しくありません。

地域 凍害リスク 12月の洗浄
京都市中心部 中〜高 ⚠️ 非推奨
京都市北部 🔴 危険
大津市南部 ⚠️ 非推奨
彦根・湖東 🔴 危険
長浜・湖北 非常に高 🔴 厳禁

乾かない壁は「カビ・コケの培養器」に

冬は日照時間が短く、気温も低い。高圧洗浄した後の水分が、外壁にいつまでも残り続けます。

せっかくきれいにしたのに、この湿った状態がカビや藻の胞子にとっては最高の環境。春先に去年より早いペースで汚れが復活するという皮肉な結果を招くことも。

外壁洗浄のベストシーズン

気温・湿度が安定して乾きやすい
4〜5月 または 10〜11月上旬

それでもきれいにしたい方へ——正しいメンテナンス法

ここまで読んで「じゃあ、どうすればいいの?」と思いましたよね。

ご安心ください。外壁を安全にきれいにする方法、ちゃんとあります。

DIYなら「ソフトウォッシュ」一択

高圧洗浄機は使わない。普通のホースのシャワー水と、柔らかいスポンジ、中性洗剤で優しく洗う。これが最も安全な方法です。

メーカー推奨の清掃方法も「ホースの水と柔らかいスポンジ・ブラシで上から下に軽く洗う」となっています。地味に見えるかもしれませんが、これが家を傷めない唯一の方法なんです。

使ってOKな道具
  • 柔らかいスポンジ・ブラシ
  • 中性洗剤(薄めたもの)
  • 通常のホースシャワー
絶対NGな道具
  • 高圧洗浄機(家庭用含む)
  • 金属タワシ・硬いブラシ
  • スチームクリーナー

こんな症状があったら、すぐプロに相談を

以下のサインが見られたら、洗浄じゃなく「塗装・補修」の時期が来ています。無理にDIYで洗おうとせず、専門家に診てもらいましょう。

  • チョーキング
    壁を触ると白い粉がつく
  • シーリングの劣化
    ひび割れ・硬化・痩せが見られる
  • クラック
    幅0.3mm以上のひび割れがある
  • 塗膜の浮き・剥がれ
    塗装が浮いたり剥がれたりしている
  • コケ・カビの広範囲な発生
    北側や日当たりの悪い面に広がっている

これらは外壁の防水機能が低下しているサイン。高圧洗浄で無理に洗うと、症状を悪化させるだけです。

まとめ:数万円の節約が、数百万円の損失に変わる前に

今回のポイント

  • 家庭用高圧洗浄機は、劣化した外壁には「凶器」になり得る
  • シーリング・クラック・換気口への噴射は絶対NG
  • 12月の洗浄は「凍害」による破壊リスクが最大化する
  • 数万円の業者代を節約しようとして、数百万円の修繕費を招くリスクがある

「数千円の大掃除のつもりが、数十万〜数百万円の修繕に」——これ、決して大げさな話じゃないんです。

DIY高圧洗浄による損傷はメーカー保証の対象外となる可能性が高く、火災保険の適用も難しいケースがほとんど。

家をきれいにしたいのは、「長く快適に住みたいから」のはず。その目的で家の寿命を縮めてしまったら、本末転倒ですよね。

今年の年末は、無理な高圧洗浄はグッとこらえて、まずは「家の健康診断」を目視でやってみるところから始めてみませんか?少しでも気になる症状があれば、遠慮なくプロに相談してください。

外壁のことでお悩みなら、お気軽にご相談ください

「うちの壁、高圧洗浄しても大丈夫かな?」「このヒビ、放っておいていいの?」
そんな不安を感じたら、自己判断せずに専門家の診断を受けてみてください。

株式会社RIzaimでは、京都市山科区を中心に、外壁・屋根の無料診断を承っております。無理な営業は一切いたしませんので、「ちょっと見てもらいたいだけなんだけど…」という方も、どうぞお気軽にお声がけくださいね。


お電話でのご相談も承っております

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