なぜ50万円も違う?外壁塗装の見積もり、価格差の裏側を現場のプロが解説

【現場を知り尽くすプロが語る】外壁塗装、実は「塗る前」が9割。高圧洗浄とシーリングの本当の話

こんにちは。秋晴れの日にふと自宅を見上げたとき。壁の汚れやひび割れが目に入って、ドキッとしたことはありませんか?「そろそろ外壁を塗り直した方がいいのかな」と思って、試しに何社かに見積もりを取ってみる。

すると出てきた金額が、A社は70万円でB社は120万円。
この50万円の差って、いったい何なんでしょう?

実を言うと、この価格の裏には「完成したら見えなくなる工程」の品質差が、恐ろしいほど隠れているんです。

今回の記事では、なぜ業者によって見積金額がこんなにも違うのか。
その「価格の裏側」を、現場を知り尽くした立場から徹底的にお話しします。
最後まで読んでいただければ、単に安いだけの業者ではなく、あなたの家を本当に長持ちさせてくれる誠実なパートナーを見抜く「確かな目」が手に入るはずです。

結論から言います:最高級の塗料を使っても、下地がダメなら意味がない

塗装って、実は「お化粧」と同じなんですよね

外壁塗装の寿命を決めるもの。
それは高価な塗料のグレードではありません。
塗料と下地の「密着力」なんです。

どれほど良い塗料を使っても、汚れた壁や劣化したシーリングの上から塗ったら?
あっという間に剥がれてしまうんですよ。

ここで興味深いデータがあります。
鋼構造物を対象にした研究なんですが、塗膜寿命に影響を与える要素のうち、下地処理(素地調整)が約50%を占めているんです。
対して、塗料の種類はわずか4.9%程度。

住宅の外壁塗装でも、この傾向は基本的に同じだと考えられています。

塗膜寿命に影響を与える要素

※出典:関西鋼構造物塗装研究会による研究データより。対象は鋼構造物ですが、下地処理の重要性を示す業界指標として広く参照されているものです。

これ、料理の「下ごしらえ」に似ていると思いませんか?
どんなに高級な食材を使っても、下処理を怠れば美味しい料理にはならない。

外壁塗装も同じ。
高級なファンデーションを塗る前に、しっかり洗顔して化粧水で整えるじゃないですか。
スキンケアが美しいメイクの土台になるように、下地処理こそが長持ちする塗装の命なんです。

だからこそ、現場を知っているプロほど塗料選びより下地処理の品質にこだわります。
「最も弱い部分が全体の寿命を決める」という最弱リンク理論。
これ、外壁塗装にもそのまま当てはまるんですよね。

外壁塗装の下地処理作業
Photo by Unsplash – 外壁塗装における下地処理の様子

塗装の寿命を握る3つの工程:高圧洗浄・シーリング・ケレン

外壁塗装で本当に大切なのは、完成したら「見えなくなる工程」の質。
この3つの作業が、10年後のあなたの家を決めると言っても過言じゃありません。

①高圧洗浄:ただの”水洗い”なんかじゃない

高圧洗浄って、単なる汚れ落としだと思っていませんか?
違うんです。
これは塗料の密着性を最大限に引き出すための、繊細な前処理技術なんですよ。

何を除去するか

  • チョーキング(白亜化した粉)
  • カビ・コケ・藻の根っこ
  • 脆くなった旧塗膜

特にチョーキングは要注意です。
粘着力を完全に失っているので、この上から塗装すると新しい塗料まで一緒に剥がれてしまう危険性があります。

標準的な水圧は13〜15 MPa(メガパスカル)
これが業務用の標準規格で、汚れをしっかり除去できる強さなんです。
家庭用では弱すぎるし、逆に強すぎると外壁材を傷つけてしまう。
だから適切な調整が求められるわけですね。

そして何より重要なのが「乾燥時間」。
これ、現場で一番手抜きされやすいポイントなんです。

高圧洗浄後の乾燥時間は、最低でも24時間
理想を言えば48時間は確保してほしいところ。
外壁に水分が残っていると、塗膜が膨れたり早期に剥がれたりしてしまうんです。

特に冬場は要注意。
丸1日以上、できれば2日は乾燥期間を取るべきなんですよね。
もし高圧洗浄した当日中に次の工程に進む業者がいたら?
ちょっと待ってください、それ危険信号です。

工程表で洗浄日と下塗り日の間隔を、必ずチェックしてくださいね。

高圧洗浄による外壁の下地処理
高圧洗浄で外壁の汚れを徹底除去

②シーリング工事:防水だけじゃない、実は「耐震」の要なんです

シーリング材の役割。
外壁材の継ぎ目を埋める一次防水として機能しているのは、皆さんご存知かもしれません。
でも実は、もっと重要な仕事があるんです。

それは「建物の動きを吸収する」こと。

地震や強風、気温変化で建物は微妙に揺れたり膨張・収縮したりしています。
シーリング材は伸縮性によって、そうした動きを吸収するクッションとして働いているんですよ。
この役割を理解せずに、安易に「増し打ち」を選んでしまうと…
数年後に大きなトラブルを招く可能性があります。

シーリング工事には「打ち替え」と「増し打ち」の2種類があって、基本的には打ち替えが推奨されるんです。

打ち替えと増し打ちの比較

項目 打ち替え(推奨) 増し打ち
工法 既存シーリング材を完全撤去→プライマー塗布→新材充填 既存シーリング上に新材を重ねる簡易工法
費用相場 900〜1,200円/m 500〜900円/m
耐用年数 7〜10年(長いもので12〜15年) 5〜6年程度
厚み 推奨10mmを確保 3〜5mm程度と薄い
長期コスト 足場工事込みでも結果的に経済的 短期間で再施工が必要となり割高に

足場を組む工事なら、短期間で再施工が必要になる増し打ちは、結局割高になってしまうんです。

絶対に省略してはいけない工程

プライマー塗布

プライマーには3つの重要な役割があって:

  1. 接着剤として働く機能
  2. 素材の強度を補強する効果
  3. ブリード現象(黒ずみ)を防ぐこと

これを省略すると、数ヶ月〜2年で剥離が始まって、最終的には雨漏りの原因になってしまうんですよ。

もう一つ、塗装する場合は必ずノンブリードタイプを選んでください。
シーリング材に含まれる可塑剤が塗装表面ににじみ出て黒ずんでしまう「ブリード現象」を防ぐためです。
製品ラベルに「ノンブリード」「NB」と書いてあるか、必ず確認してくださいね。

シーリング工事の様子
丁寧なシーリング工事が建物を守る

③ケレン作業:地味だけど、塗膜寿命を左右する”一手間”

ケレンという言葉、初めて聞く方もいるかもしれません。
これは塗装前の下地処理作業で、サビや汚れの除去、それから「目粗し(アンカー効果)」という大切な目的があるんです。

面白い話があって。
「ケレン」という言葉の由来、実は明治時代に遡るんですよ。
外国人技師が職人に「clean(クリーン)」と言ったのが訛って変化したとされているんです。

こんな地味な作業が、実は塗膜の寿命に決定的な影響を与えている。
これ、私自身も現場に入って初めて実感したことなんですよね。

外壁塗装では主に3種ケレン4種ケレンが使われます。

  • 3種ケレン:部分的なサビや塗膜剥離が対象。電動工具と手工具を併用して作業します。費用相場は500〜1,200円/m²。
  • 4種ケレン:軽度な汚れや粉化が対象で、手工具のみで軽く研磨。主に「目粗し(足付け)」が目的なんです。費用相場は200〜300円/m²程度ですね。

外壁本体だけじゃなくて、付帯部のケレンが特に大事なんですよ。

  • 雨樋の金具:鉄製でサビが発生しやすい。だからケレン+防錆塗装が必須。
  • 水切り板金やシャッターボックス:スチール製なので、サビ対策が欠かせません。
  • 破風板や鼻隠し:劣化すると雨漏りの原因になるので、丁寧なケレンが必要になってきます。

でも正直なところ、ケレンは手抜きされやすい工程なんです。

なぜかというと:

  1. 塗装で隠れてしまうから。手抜きしても、数年後にしか発覚しない。
  2. 地味で根気が必要な作業だから。人件費がかさむんですよね。
  3. 見積もりに「ケレン」という項目が明記されず、「一式」と書かれていて詳細が分からないケースが多いんです。

業界では「ケレンなくして塗装なし」と言われるほど重要な工程。
でも同時に、最も手抜きされやすい工程でもあるんです。
見積書にきちんと記載されているか、必ずチェックしてください。

丁寧な下地処理作業
職人による丁寧な下地処理が品質を決める

【実践編】もう騙されたくない方へ。プロの仕事を見抜く見積書チェックリスト

見積書って、業者の技術力と誠実さを映す鏡なんですよね。
表面的な価格比較だけじゃなくて、下地処理に関する記述の具体性を見ることで、本物のプロフェッショナルかどうかを見分けられるんです。

その「一式」表記、ちょっと待って!見積書で必ずチェックすべきポイント

最も警戒すべきは「一式」表記の多用
これ、本当に要注意なんです。

「外壁塗装一式○○円」「洗浄・養生一式○○円」みたいな記載が多い場合。
各工程を細かく計測せずに、適当に見積もりを出している可能性が高いんですよ。

建物って一軒一軒、大きさが全然違いますよね?
だからきちんと計測した数値で出すことが必須なんです。

チェックすべき5つの項目

  •  1. 高圧洗浄

    単価相場:200〜300円/m²

    • 面積が数値できちんと明記されているか
    • 洗浄後の乾燥時間(最低24時間)が工程表に反映されているか
  •  2. シーリング工事

    打ち替えなら:800〜1,200円/m

    • 長さ(m)で記載されているか
    • プライマーの使用が明記されているか
    • ノンブリードタイプかどうか
  •  3. ケレン作業
    • 「ケレン」「素地調整」「下地処理」などの項目が明記されているか
    • 付帯部(雨樋金具、水切り板金など)のケレンも含まれているか
  •  4. 使用材料

    「シリコン塗料」だけじゃなくて、「日本ペイント/ファインシリコンフレッシュ」みたいに、塗料のメーカー名・製品名が記載されているか

  •  5. 塗装面積

    下塗り・中塗り・上塗り、それぞれの塗料名と面積が数値で記載されているか

契約前に必ず聞いてほしい。プロの誠実さを測る”7つの質問”

本物のプロなら、これらの質問に具体的な数値と製品名を使って即答できるはずです。

  • 質問1:「高圧洗浄後の乾燥時間、どうされていますか?」
    適切な回答:「最低24時間、下地の状態や気候によっては48時間設けています」
    注意サイン:「特に決まってないです」など曖昧な回答
  • 質問2:「シーリング材、ノンブリードタイプですか?製品名も教えてもらえますか?」
    適切な回答:具体的な製品名を即答できる
    要注意:ノンブリードを知らない、製品名を答えられない
  • 質問3:「ケレン作業って、どの程度やっていただけるんでしょう?」
    適切な回答:劣化状況に応じた具体的な方法を説明できる
    論外:ケレンという用語自体を知らない
  • 質問4:「工程表、提出していただけますか?」

    各工程の日程と作業内容が明記された工程表を提示できることが重要

  • 質問5:「各工程の写真記録、残してもらえますか?」

    全工程の写真を撮影して報告書として提出するのが標準

  • 質問6:「足場って、どんな種類を使われるんですか?」
    正解:クサビ式(ビケ)足場を使用
    注意:労働安全衛生規則の基準を満たさない簡易な単管足場は使用できません
  • 質問7:「保証内容と期間、書面で見せていただけますか?」

    必須:保証書を提示して、保証範囲と期間を明確に説明できること

工程写真って、手抜き工事の最強の抑止力なんですよね。

特に重要な撮影ポイント:

  • 高圧洗浄後
  • シーリング撤去後
  • プライマー塗布後
  • ケレン作業後
  • 下塗り後
  • 中塗り後
  • 上塗り後
美しく仕上がった外壁

Photo by Unsplash – 適切な下地処理により美しく長持ちする外壁

まとめ:下地処理の品質が、10年後のあなたの家を決めてしまう

今回お話しした外壁塗装の真実、まとめておきますね。

  • 外壁塗装の寿命は、高価な塗料ではなく「見えなくなる下地処理」で決まる
  • 高圧洗浄、シーリング、ケレンの3つの工程が、塗膜の長期性能を左右する
  • 良い業者ほど見積書に各工程の詳細な数値と内容を明記していて、「一式」表記を多用しない
  • 価格だけじゃなく作業内容について具体的に質問して、誠実な回答が得られる業者を選ぶ
  • 工程写真の提供は、業者の誠実さと技術力を示す重要なバロメーター

外壁塗装って、決して安い買い物じゃありません。
だからこそ、価格の裏側にある「仕事の質」を見抜く知識が、あなたの家と資産を守る最大の武器になるんです。

適切な下地処理さえ施せば、標準的なシリコン塗料でも10〜15年の耐久性を発揮できる。
建物を長期間にわたって雨・風・紫外線から守れるんですよ。

賢い業者選びは、結果的に長期的なコストメリットをもたらしてくれます。
大切な住まいの資産価値を維持する、最善の投資になるはずです。

信頼できるパートナーをお探しなら、ぜひ私たちにご相談ください

この記事で解説した「見積書チェックリスト」や「7つの質問」。
これらを活用して、まずは2〜3社の信頼できる業者から相見積もりを取ってみてください。

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下地処理の品質にとことんこだわって、工程写真を含めた丁寧な施工報告を行っているんです。


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